こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。
今回は発熱時の対応についてお話させていただきます。
◎病院受診のタイミング
熱が出た時に病院を受診するタイミングって難しいですよね。これについては正解はなく、申し訳ないですが「お子さんの状態に応じて適宜受診してください」、としかお答えできないです。発熱すると、すぐ病院受診する!これももちろん悪くありません。特に最近では新型コロナウイルスなど感染症予防の観点から、保育園や学校から熱が出ればすぐに病院を受診して検査を受けるように言われることも多いと思います。
では、夜間や休日など、病院にアクセスしにくい時間帯であればどうすればよいのでしょうか?一般的に夜間でも受診が望ましいとされている基準は、
① 生後3か月未満で、38.0℃以上の発熱がある
② ぐったりしていて、顔色が悪い。
③ 呼吸が速い
④ よびかけても反応が悪く、眠ってばかりいたりぼんやりしている
⑤ 水分が摂れず、半日以上尿が出ない
⑥ けいれんがあった(特に初回のけいれん)
また、一度病院を受診して薬が処方され様子を見るように言われた場合、その後の再診の目安も悩ましいですよね。医師から別に再診の目安についてご説明を受けられている場合はその指示にしたがっていただくのがよいですが、「お熱が続いたらまた受診してくださいね」と単に言われた場合、その後何日熱が続けば受診したらよいのでしょうか。このあたりは医師の方針や、お子さんの全身状態にもよるので一概には言えませんが、当院ではお子さんの状態の悪化がない場合については2~3日様子をみても熱が下がらない場合は再診していただいた方がよいと考えています。もちろん、水分がとれない、活気がない、症状が悪化するなどの場合は早めの受診が必要です。
◎抗原検査を受けるタイミング
「〇〇が流行っているので、病院に行って検査してもらってきてください」と保育園や学校などで言われた経験のある方もいらっしゃるかと思います。
一方、インフルエンザは発熱して時間が経たないと検査で陽性に出ない、と言われますが、本当のところはどうなのでしょうか?
経過時間と検査陽性率については様々な報告がなされており、結果も報告により大きく異なっていますので、どれをご紹介すべきか迷うのですが、最近の報告で、実際患者さんをみている実感に近い論文をご紹介させていただきます。
この論文1)ではインフルエンザの抗原検査の経過時間別の陽性率が報告されています。インフルエンザ様症状(発熱、咳、咽頭痛)を示す患者さんのうち、発症12時間以内の陽性率が50%、12-24時間が60.9%、24-48時間が74.2%、48時間以上が75.0%となっています。
(文献1より医院作成)
時間が経たないと検査結果が正確に出ないという一方、タミフル®などの抗インフルエンザ薬は発熱から48時間以上経過すると投与しても効果がほとんどなくなってしまうため、可能な限り早期診断・早期治療が望ましいというジレンマもあります。受診の仕方に正解はありませんが、発熱した翌日に検査を受けるか、発熱が日中にあれば、当日に通常の診療時間中に検査を受けて、陰性なら翌日も再度受ける(保険診療上、同じ日に2回検査を受けることはできません)、という対応が現実的な気がします。
新型コロナウイルス感染症については、変異株の種類によって抗原検査の陽性率は大きく異なります。デルタ株以前は主に肺でウイルスが増殖するため、鼻の奥に綿棒を入れる検査では十分ウイルスを検出できなかったのですが、オミクロン株では鼻やのどでウイルスが増殖するため(そのため感染力が強いと言われています)、鼻の奥の検査でもウイルスの検出が容易となりました。論文で報告されているデータではありませんが、経験上オミクロン株で発熱当日であっても病院で検査を行い(自宅で行う検査では検査キットの種類と、検体採取手技により信頼性が落ちることもあります)抗原検査陰性であれば、翌日以降に陽性となる可能性は低い印象です。
【参考文献】
1)明石祐作ら. 発症から検査までの時間がインフルエンザ迅速抗原検査に与える影響:前向き観察研究. 感染症誌. 2021. 95:9-16.
◎解熱剤の使用
小児で一般的に使用される解熱剤のアセトアミノフェン(カロナール®、アンヒバ®、アルピニー®など)は用法用量を守って使用すれば安全性が高い薬です。解熱剤の使用により病状が悪化することは基本的にはないので、熱があればとりあえず使用して問題ありません。解熱剤は高熱に伴う倦怠感や食欲不振を軽減する薬なので、熱でしんどそうだなと感じたら使ってあげるとよいでしょう。解熱剤について詳しい説明はこちら
◎発熱時の入浴
「熱がある時にお風呂に入ると病状が悪化する」、こう言われたことがある方も多いと思いますが、医学的にはこれは正確ではありません。発熱時は汗をかきやすいので、ぐったりしている時以外は入浴やシャワー浴で皮膚を清潔に保っていただいて問題ありません。
発熱時の入浴の注意事項として
・高熱の時に熱いお風呂に入ると体の負担が大きい
・入浴でたくさん汗をかくと脱水のリスクがある
・湯冷めしないようにする
ことに気を付けてください。ぬるま湯に短時間入るか、シャワーをさっと浴びる程度にしていただくのがよいでしょう。冬場は脱衣所や浴室内を事前に温めておくと体の負担が少なくなるのでおススメです。
◎発熱時の服装
「発熱時は厚着をして汗をたくさんかけば早く治る」、これは医学的には完全に間違いです。解熱時には汗がたくさん出ることが多いですが、汗が出るのは解熱時の現象であって、汗がたくさん出たから治るわけでは決してありません。発熱時に厚着をして汗を多量にかくと脱水となるリスクが上がります。
発熱時には本人が快適に過ごせるような服装を心がけましょう。特に熱が出てすぐなど手足が冷たい時や寒気がある時は暖かい服装や掛け物をして、手足が温かくなってきたら、涼しい恰好にしてあげるのがよいでしょう。発熱時には汗をかきやすいので、吸水性の高い下着を着用させて、こまめに交換するようにしてください。
◎発熱時の食事
「熱があるときはおかゆやうどんがよい」とよく言われますよね。決して間違いではないのですが、医学的にはおかゆやうどんにこだわる必要は特にありません。高熱の時は食べ物を噛むのもしんどいことがあるので、あまり噛まなくても良いおかゆやうどんは食べやすいのですが、よく噛んで食べて胃に入ってしまえばおかゆも普通の白米も消化には大きな差はありません。特にこどもの発熱時に関しては、消化に悪くないもので好きなものを食べてもらうのが一番です。脂っこいものは消化に悪いので、揚げ物や肉肉しいものでなければ概ね問題はありません。熱が出ている時は、とりあえず短期間をしのげれば大丈夫なので、特に年少児ではバランスの良い食事にこだわらず、好きなもの、食べれるものを与えてあげましょう。ラムネ、ゼリー、アイスなどが好まれる印象です。
しんどくて食事が摂れない場合は、とりあえず水分と最低限のカロリーだけでも摂取するようにしましょう。全くカロリーを摂らないと体がしんどくなるので、出来ればお茶や水だけではなく、ミルクやイオン水のようなカロリーのある飲料を積極的に摂るようにしてください。最低限の目安は年齢や体重により異なりますが、例えば1歳で体重10kgの場合は1時間あたり30~40ml、5kcal(1日トータルで700~1000ml、120kcal)程度で(もちろんこれより多く摂れればその方がよいです)、この目安を下回る状態が続けば点滴が必要になることがあります。どれくらい水分やカロリーが足りなくても大丈夫かは年齢による差や個人差が大きいため、水分摂取が不良でぐったりしている時は早めの病院受診を検討してください。
以上、発熱時の対応についてお話させていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。