診療

日焼けとビタミンDの話

 こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。

 今回はこどもの日焼けとビタミンDについてお話したいと思います。

※この記事では特定の商品をご紹介していますが、ステルスマーケティングではありません。

 

◎こどもの日焼けについて

 夏になるとプールやスポーツや外遊びで真っ黒に日焼けしたこども達をよく見かけます。いかにも健康的でほほえましい姿ですが、最近では小児期でも過度に紫外線を浴びると様々な悪影響があることが分かってきています。一方日光をほとんど浴びないと、体に必要なビタミンが生成できず、健康に悪いことも知られています。

 日焼けに限らず、何事も適切な度合いというものがありますが、「適切な日焼けの度合い」というのはどの程度なのでしょうか。以下でお話させていただきます。

 

◎紫外線による悪影響について

 大人では紫外線をたくさん浴びると、シミやシワの原因になることがよく知られています。下の写真はアメリカの有名な医学雑誌に報告された患者さんの顔写真です1)。

 この写真はもちろん合成でもメイクでもありません。顔の右半分はお肌に張りがありますが、左半分がしわしわになっていて色素が沈着しているのがよく分かりますね。この方は69歳のアメリカ人の男性で、トラックの運転手を28年されていたそうです。アメリカは左ハンドルなので、顔の左半分に紫外線を浴び続けて、紫外線を浴びる量が比較的少ない右半分よりも明らかに老化が進んでいます。

 この方は極端な紫外線の浴び方をされていますが、紫外線による皮膚の老化の影響がよく分かる一枚ですね。

 紫外線には皮膚の老化効果があり、小児期であっても悪影響は避けることはできません。また、紫外線をたくさん浴びすぎると皮膚の老化以外にも、将来的に皮膚がんを起こしやすくなったり、白内障などの目の病気を引き起こす原因となります。

 赤ちゃんのうちから過度な日焼けをしすぎないように注意してあげることが、生涯健康に過ごすために重要です。

【参考文献】

1)Gordon JRS, et al. Images in clinical medicine. Unilateral dermatoheliosis. N Engl J Med. 2012 Apr 19;366(16):e25.

 

◎医学的に必要な日焼けとは

 過度な日焼けが健康に悪いことをここまででお話させていただきましたが、全く日光を浴びないと、それはそれで健康に良くありません。

 皮膚が紫外線を浴びると、皮膚に存在する7-デヒドロコレステロールという物質を原料にしてビタミンDが合成されます。ビタミンDは骨を強くするなどの作用があるビタミンで、不足すると様々な問題が起こります。

 

◎ビタミンDの役割

 ビタミンDは腸でのカルシウムの吸収率を高める働きがあります。ビタミンD不足の状態ではカルシウムの吸収が十分できないため、体はカルシウム不足となります。カルシウムは骨の重要な原料ですので、カルシウムが不足すると骨がもろくなったり、骨の成長が悪くなって背が伸びにくくなったりします。

 また、最近ではビタミンDはカルシウムの代謝以外に様々な効果があることが分かってきています。

 ビタミンDは免疫を担当する細胞を調整する役割があり、感染症に対する抵抗力を高めたり、アトピー性皮膚炎やアレルギー疾患を防いだりする作用が報告されています2)3)。

また、ビタミンDはセロトニンという睡眠の質を改善させたり、気分の安定に関係する物質を増加させる働きがあることが知られており、こどもにおいてもビタミンD不足と睡眠障害との関連が報告されています4)。

【参考文献】

2)Aranow C. Vitamin D and the immune system. J Investig Med.2011 Aug;59(6):881-6.

3)Ren Y, et al. Causal Associations between Vitamin D Levels and Psoriasis, Atopic Dermatitis, and Vitiligo: A Bidirectional Two-Sample Mendelian Randomization Analysis. Nutrients. 2022 Dec 11;14(24):5284.

4)Prono F, et al. The Role of Vitamin D in Sleep Disorders of Children and Adolescents: A Systematic Review. J Mol Sci. 2022 Jan 27;23(3):1430.

 

◎ビタミンD生成に必要な日光浴の時間

 ここまでで、過度な紫外線は体に悪いけれど、適度に紫外線を浴びることは重要だとご理解いただけたと思います。では、この「適度な紫外線」を得るためには、どれくらいの日光を浴びればよいのでしょうか。

 もちろん紫外線の強さは地域や季節、時間帯により大きな違いがありますので、ここでは

 国立環境研究所の地球環境研究センターが出している大阪のデータ(https://db.cger.nies.go.jp/dataset/uv_vitaminD/ja/osaka_climatology.html)をご紹介させていただきます。

 下記のデータは、大阪の晴れている日の正午頃に、1日に必要なビタミンDを生成する時間および皮膚に悪影響が出る時間(最小紅斑紫外線照射時間)です。

(国立環境研究所地球環境研究センターのデータを一部改変)

 一年で一番紫外線が強い8月では、必要なビタミンDを生成するためには半袖半ズボンで6分程度日光を浴びれば良く、35分以上日光を浴びれば皮膚に悪影響が出るようです。一方、一年で一番紫外線が弱い1月では、長袖長ズボンで1時間程度日光を浴びないと必要なビタミンDが生成できない計算になります。マスクや手袋やマフラー、ニット帽などをしていると日光を浴びる面積が少なくなりビタミンDの生成効率が低下するため、より長時間日光を浴びる必要があります。

 これを見ると、一般的な生活では夏場は過剰に紫外線を浴びていて、冬場は逆に足りていないという方が多いのではないでしょうか。なかなか適量のビタミンDを安定して補うのは難しいですね。

 

◎日焼け止めについて

 夏場でもスポーツをしたり、外で元気に遊んだりすることは心身の健康な発育には重要です(しかし最近の夏は暑すぎるので、熱中症対策は必須です)。日焼け止めを塗ると、皮膚に届く紫外線量をかなり減らすことが出来るので、こどもでも適切に日焼け止めを使用することが必要です。ドラッグストアなどでこども用の日焼け止めが販売されていますが、こどもはよく汗をかくため出来ればウォータープルーフのもので、日常生活用にはSPF 20、PA++程度、海など用にはSPF 30、PA+++程度を目安に購入して使用するようにしてください。また、ウォータープルーフでも拭って落ちたりすることもあるので、こまめに塗り直すようにするとよいでしょう。

 一度にどれくらいの量の日焼け止めを塗るかはなかなか難しいので、環境省が出しているマニュアル(https://www.env.go.jp/chemi/uv/uv_pdf/03.pdf)の一部を下にお示しします。ご参考にしてください。

(環境省 紫外線環境保健マニュアル2008より転載)

 

◎食事・サプリについて

 特に紫外線が弱い冬場などでは皮膚でのビタミンDの生成が不足してしまいます。ビタミンDは皮膚で生成するのが効率がいいと言えばいいのですが、食事からも摂取することが出来ます。

 ビタミンDが不足すると、先ほどお話したように様々な悪影響が出るので、出来るだけ食事で摂取する量を増やしていきたいですね。ビタミンDは魚類、きのこ類、卵に多く含まれているので、意識的に摂取するようにしてください。

 以下にそれぞれの食品に含まれるビタミンDの量をお示しします。

(文部科学省 食品栄養データベースより作成)

 また、どれくらい食事からビタミンDを摂取すればよいのでしょうか?ビタミンDは過剰に摂取すると健康障害が起こる可能性があり、耐容上限量(これ以上摂取しない方がよい量)も併せて設定されています。

(厚生労働省 日本人の食事摂取基準(2020年版)より)

 どうでしょうか。好き嫌いがある場合などはなかなか必要量の摂取が難しいと感じられる方も多いかもしれません。

 その場合はサプリメントなどでビタミンDを補うのも選択肢の一つです。ドラッグストアなどではビタミンDを含むサプリメントがたくさん販売されていますが、当院では小児用のビタミンDのサプリメントである森下仁丹のBaby D®をお勧めしています(よりビタミンD含有量の多いBaby D 200®より、通常のBaby D®の方が量を調整しやすくて良いでしょう)。

(森下仁丹 Baby Dホームページより)

 特に冬場などは、日光浴の時間によってBaby D®をを1日1~2滴飲ませてあげると、1日に必要なビタミンDが補えます。Baby D®はドラッグストアなどでは扱っていないことが多いため、Amazonなどインターネットで購入するのが良いでしょう。

 

 

 以上、長くなりましたが、日焼けとビタミンDのお話をさせていただきました。

 最後まで読んでいただきありがとうございました。

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