診療

熱性けいれんの話

 こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。

 今回は熱性けいれんについてお話させていただきます。

 

◎原因について

 熱性けいれんが起こるのは、発熱により脳の神経ネットワークがうまく機能しなくなることが原因と考えられていますが、はっきりしたことは分かっていません。

 

◎起こしやすい年齢について

 生後6か月~5歳頃に起こることが多いです。一生に一度でも熱性けいれんを経験するこどもは10%前後とされています。熱性けいれんをはじめて起こしたこどもが、今後熱性けいれんを再び起こす可能性は30%程度です。

 

◎熱性けいれんの一般的な経過

 通常は発熱から24時間以内にけいれんが起こります。発熱から24時間以上経過した場合、けいれんを起こす可能性は低いです。

 けいれん自体は特に予兆なく起こることが一般的です。左右対称で、体をつっぱったり手足をがくがくさせる動きが数分続き、おさまった後は寝ることが多いです。寝てしまった後10~20分くらいで目が覚めて、ぼーっとしたり、興奮して大泣きしたりしますが目線は合い、受け答え可能になります。そのあとしばらくしてまた寝ることが多いです。

 

◎けいれん時の対応について

 短時間のけいれんで命にかかわることは基本的にありません。

(実際は難しいですが、なるべく)落ち着いて行動しましょう。ベッドや床などに寝かせて、嘔吐した時に吐物を吸い込まないように体を横向きにしましょう。

 けいれん中に体を押さえつけたり、ゆすったり、大きな声で呼びかけたり、口の中に手や物をいれるのは避けましょう。

 熱性けいれんは持続時間が重要なので、時計を確認して開始時間、おさまった時間をチェックしましょう。

 もし余裕があれば、けいれんの様子を動画で撮影してください。病院受診された際に参考になります。

 

◎夜間でも受診すべきか、救急車を呼ぶ基準について

 初めてのけいれんの場合は速やかに受診することが望ましいです。

 2回目以降であれば、数分でけいれんがおさまり、けいれんがおさまって10~20分程度して受け答えが可能になったり、意識がはっきりするような場合は必ずしも大急ぎで受診する必要はありませんが、通常診療時間内には受診した方が安心です。

 けいれんがおさまった後も意識がはっきりしない時、ぐったりしている時や普段と状態が違って心配な時は救急車などで早急に病院を受診してください。また、1日に複数回けいれんがある場合も早めの受診が必要です。

 医療機関を受診される際は、移動中に再びけいれんが起こる可能性もあるため、目を離さないようにしてください(保護者の方が一人で自家用車を運転して受診されるのは、道中の子どもの観察が難しく、何かあった場合対応が困難なため、避けるのが無難です)。熱性けいれんで受診する際は救急車を呼んでもよいでしょう。

 5分以上けいれんが続く場合は迷わず救急車を呼びましょう。

 

◎熱性けいれんの後遺症について

 短時間のけいれんで後遺症が残ることは基本的にありません。30分以上持続する場合は稀ですが後遺症が残ることがあると考えられています。

 熱性けいれんを起こしたことのある子どもが、その後てんかんに移行する可能性は2~3%と考えられています。

 

◎予防法について

 最近では解熱剤を使用することで熱性けいれんの発生率が下がるかもしれないという報告1)もされているため、特に熱性けいれんを起こしやすい発熱24時間以内は積極的に使用を考慮しても良いかもしれません。

 けいれんを予防するためにダイアップ®という坐薬を処方することがあります。ダイアップ®には眠気やふらつき(それにより全身状態の把握が困難になる、水分摂取がしにくくなる)という副作用があるため、リスクが高いこどもにのみ処方しています。

 ダイアップ坐薬®を処方するのは、長時間のけいれんを起こしたり、3回以上熱性けいれんの既往がある場合などです。

【参考文献】

1)Murata S, et al. Acetaminophen and Febrile Seizure Recurrences During the Same Fever Episode. Pediatrics. 2018 Nov;142(5):e20181009.

 

 

 以上、熱性けいれんについてお話させていただきました。

 最後までご覧いただきありがとうございました。

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