こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。
今回はさいヘルニアについてお話させていただきます。
◎どのような病気か
赤ちゃんが生まれて間もない時期は、まだへその下の筋肉が完全に閉じていないため、泣いたりいきんだりするとへその筋肉のすき間から腸が飛び出し、へそが出た状態となります。自然に治ることが多いですが、治らない場合は手術が必要になることもあります。自然に治った場合でも、へその皮膚が伸びた状態が続いたことで治った後も皮膚が余ってしまい、美容的に問題となることもあります。
最近では圧迫療法といって、積極的に治療を行うことによって治癒率をアップさせることが出来るほか、治癒後の皮膚の余剰を防ぐ治療がよく行われています。
◎圧迫療法とは
綿球などで出ているへそをお腹の中にもどし、その上を防水性のあるフィルムでとめます。フィルムを貼ったまま入浴も可能です。フィルムの交換は1週間に1回程度で大丈夫ですが、お肌が弱い赤ちゃんでは数日に1回交換した方がよいでしょう。はがれてしまった場合は適宜貼りかえます。
お肌の弱い赤ちゃんでは、テープかぶれが問題となることもあります。その場合は炎症をおさえるステロイドの塗り薬を使用したり、しばらく圧迫療法を中断したりします。
※以前は5円玉や10円玉で圧迫するという方法もあったようですが、硬いもので圧迫すると皮膚を傷めることがあるため避けましょう。
報告1)によると、自然経過での治癒率が44.0%(皮膚余剰例を含めると56.8%)であったのに対して、圧迫療法を行った場合の治癒率は75.1%(皮膚余剰例を含めると85.2%)とされており、圧迫療法の効果の高さがわかります。
【参考文献】
1)谷口直之ら 自然経過観察例と比較した乳児臍ヘルニアのテープ固定療法の有用性ー第46回九州小児外科研究会アンケートからー 日小外会誌 第55巻5号 2019年8月 pp920-926
◎治療期間について
何もせず自然治癒を待つ場合、1歳までに約80%、2歳までに約90%が治癒します。
2歳頃まで治らない場合、小児外科に紹介し手術を行うことが多いです。
圧迫療法を行った場合、数か月以内に治癒することが多いです。圧迫療法は早い時期に行う方が効果が高く、生後半年を過ぎて開始しても効果はあまり期待できません。参考文献1)で報告されたさいヘルニアの治癒までの期間を下にお示しします。
参考文献1)より医院作成
◎おススメの圧迫材について
<セットで購入する場合>
ニチバン乳児用へそ圧迫材パック(メーカーのサイトにリンクを貼っています):さいヘルニア専用の圧迫材です。SサイズとMサイズがありますが、まずはSサイズで始めるとよいでしょう。ネット通販で購入できます。使いやすいですが、値段は高めです。
<個々に購入する場合>
・綿球:直径15-20㎜程度が使いやすいです。100均ショップやドラッグストア、ネット通販で購入できます。
・圧迫フィルム:防水性があり、多少伸縮性があるものが使いやすいです。ドラッグストアやネット通販で購入できます。よく使用される商品としては
〇アルケア マルチフィックス・ロール(5cm×10m):必要量を切って使用します。2000円程度です。
〇テガダーム:1枚100円程度です。1622w(4.4×4.4㎝)や1634(6×7㎝)が使いやすいです。
以上、さいヘルニアについてお話させていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。