診療

乳児期の貧血の話

 こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。

 今回は乳児期の貧血、特に鉄欠乏性貧血についてお話させていただきます。

 

◎そもそも貧血とは

 貧血の症状と言われると、皆さんはどのような症状を思い浮かべるでしょうか?

 朝礼中にくらくらっときて倒れる、または立ちくらみをよくする、などがイメージしやすい貧血症状ではないかと思います。しかし、これらは医学的には「貧血」ではなく、脳の血流が低下した状態、いわゆる「脳貧血」の症状と位置付けられています。医学的な「貧血」とは、血液中の赤血球に含まれるヘモグロビンという物質が少なくなった状態をいいます。ヘモグロビンは赤血球の中に含まれる物質で、全身に酸素を届ける働きをしています。血液中のヘモグロビンが少なくなると全身の組織に十分な酸素が行きわたらず、全身に様々な不調があらわれます。

 十分なヘモグロビンをつくるには鉄分が必要不可欠で、体内の鉄分が低下するとヘモグロビンが低下して鉄欠乏性貧血となります。

 医学的な貧血の症状は、成人であればめまい、立ちくらみをはじめ、動悸、息切れ、倦怠感、疲れやすいなどです。一方小児(特に乳児)は自分で症状を訴えることが難しいため、顔面蒼白、体重増加不良、不機嫌、元気がないなどがみられることがありますが、なかなか見つけにくいというのが実際のところです。

 

◎乳児期の貧血の原因は

 乳児期の貧血は主に鉄分が不足して起こる「鉄欠乏性貧血」です。

 出生時にお母さんからもらった鉄分は生後4~6か月頃に使い果たしてしまい、それ以降は自分で必要な量の鉄分を母乳、ミルクや離乳食から摂取しないといけません。生後6~12か月の乳児は十分な鉄分を摂取できないことが多く、体内の鉄分が徐々に減ってきて貧血が進行するおそれがあります。

 アメリカでは通常1歳の時点で貧血のチェックが行われていますが、日本ではひろくチェックするシステムがないのが現状です。

 

◎乳児期の貧血が起こす問題について

 鉄不足があると、脳や神経の発達に悪影響を及ぼすおそれがあり、知能低下、処理速度の低下、注意・運動・認知・行動面の機能低下、睡眠覚醒リズムの乱れにつながる危険性があります。また、鉄不足状態だと熱性けいれんを起こすリスクが約2倍に上がることが知られています。

 

◎検査項目について

<院内で出来る検査>

 主に指先から採血して検査を行います。

・Hb(ヘモグロビン):血液中の酸素を運ぶ物質です。11g/dl未満であれば貧血と診断します。

・MCV(平均赤血球容積):鉄不足になると赤血球が小さくなり、MCVが低下します。75未満であれば鉄欠乏の可能性があります。

※指先の血液検査は皮膚の下の水分が血液に混じってしまうことがあり、ヘモグロビンの値が実際より低く測定されることがあります。MCVは正確な値となることが多いため、MCVの値を参考に鉄欠乏かどうか判定することが多いです。

<外部の検査機関に依頼している検査>

 主に肘や手の甲の血管から採血して検査を行います。

・血清鉄:血液中の鉄分の目安で50μg/dl以上が正常値ですが、値は個人差が大きく参考程度です。

・フェリチン:鉄の貯蔵量を反映しています。12ng/ml未満であれば鉄剤の投与を考慮します。

※1μgは1mgの1000分の1、1ngは1mgの100万分の1です

 

◎治療方法について

 検査の結果鉄欠乏性貧血と診断すればインクレミンシロップ🄬という鉄剤の飲み薬を投与します。インクレミンシロップ🄬の副作用は胃部不快感、食欲低下、嘔吐などがあります。もしこれらの症状が出た場合、薬の量を調節したりして対応します。鉄剤は飲み始めると便の色が黒くなることがありますが、問題ありません。内服中に適宜血液検査を行い、鉄剤の量が適切か判断します。薬の内服期間は3か月前後のことが多いです。ことが多いので、その後2か月程度内服を続けることが多いです。

 

◎哺乳や食事で気をつけることは

 母乳は人工乳に比べると鉄分が少なめですが、お母さんが鉄不足だとさらに母乳中の鉄分が減ってしまいます。特に完全母乳栄養の場合はお母さんも鉄分を意識的に摂取するようにしましょう。

 食事について、代表的な鉄分の多い食品は赤身の肉や魚です。ただ、赤ちゃんの好みや消化機能の未熟さもあり急には食べれないので、無理はしないようにしてください。

 牛乳について、牛乳そのものには鉄分は比較的多く含まれていますが、鉄分の吸収効率が悪いと考えられています。牛乳を過剰に摂取すると貧血の原因となることがあるので、1日500ml以内にしてください。

 

 

 以上、乳児期の貧血についてお話させていただきました。

 最後までご覧いただきありがとうございました。

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