こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。
今回はステロイド外用薬(塗り薬)についてお話させていただきます。
目次
◎ステロイドとは
ステロイドはもともと人間の体の中で作られているホルモンで、アレルギーなどの免疫反応を抑えて炎症を鎮める働きがあります。この抗炎症作用を利用して塗り薬にしたものがステロイド外用薬です。皮膚は外界からの刺激に常にさらされているため、炎症が起こりやすく、ステロイド外用薬は皮膚科や小児科でよく使用されます。
◎ステロイド外用薬の種類
<強さによる分類>
ステロイド外用薬には様々な強さがあり、強さ順に1群~5群の5段階にランクがつけられています。また製品によって軟膏タイプ、クリームタイプ、ローションタイプなど様々な剤形があり、使用する部位や皮膚の状態によって使い分けがされています。
代表的なステロイド外用薬の名称と強さについて下にお示しします
<剤形による分類>
・軟膏:刺激が弱く、どんな状態の皮膚にも使用できます。一方べたつきが強いため、使用感はあまりよくありません。
・クリーム:さらっとしており使用感が良い反面、刺激が強く、汗などで流れやすいという特徴があります。主に乾燥している部位に用いられます。
・ローション:伸びがよく、さらっとした使用感です。主に頭皮など、有毛部に使用されます。小さい病変の場合、狙った場所にピンポイントで塗るのは難しいです。
◎ステロイド外用薬の副作用
テレビや雑誌、SNSなどではステロイドは「色素沈着の原因になる」「一度使うとやめられなくなる」など、副作用が強い、怖い薬の代表として言われることもありますが、適切に使用する限り、効果は高く副作用の小さい薬です。もちろん副作用がないわけではないので、ステロイド外用薬の副作用の正しい知識をここではお話いたします。
以下で小児でみられることがある代表的なステロイド外用薬の副作用をお示しします。
① 毛包炎:ストロング以上のステロイド外用薬を使用直後から起こることがあります。外用の中止によりすぐに治りますが、外用抗生剤の使用が必要なこともあります。
② にきび(ざ瘡):顔ではマイルド以上、胸や背中ではストロング以上のステロイド外用薬の使用開始後2~3週間後から増加すします。外用の中止により治癒します。
③ 感染症の悪化:ステロイドは免疫を抑制するはたらきがあるため、感染症が起こっている場所には使用しないことが基本です。誤って使用した場合はもともとある皮膚感染症が悪化することがあります。
④ 皮膚萎縮、皮膚線条(ひび割れ):ストロング以上のステロイド外用薬を数か月以上使用すると起きやすいです。外用の中止により回復することが多いです。
⑤ 多毛:ストロング以上のステロイド外用薬を数か月以上使用すると起きやすいです。外用の中止により回復します。
⑥ 色素脱失:ベリーストロング以上のステロイド外用薬を数か月以上使用すると起きやすいです。外用の中止により回復します。
⑦ 酒さ用皮膚炎:顔面にストロング以上の外用ステロイドを数か月以上使用すると起きやすいです。外用の中止により一旦悪化しますが、その後ゆっくりと回復します。
お示ししたように、正しくステロイド外用薬を使用した場合、かなりの長期間使用しなければ大きく問題となるような副作用はあまりないことが分かります。よく言われる色素沈着については、ステロイド外用薬の副作用ではなく、もともとの皮膚疾患による痒みのため搔き続けて炎症が起こってしまうことが原因と言われています。
【参考文献】
相馬良直.ステロイド外用剤の使い方―正しい知識を持って上手に使おう―;日本臨床皮膚科医会雑誌 24 (3), 233-237, 2007
◎適切な塗る量について
ステロイド外用薬を使用してもなかなか皮膚の状態がよくならないことがあります。この場合、
①ステロイドの種類(強さ)が弱い
②そもそもステロイドが効く病態ではない
なども考えられますが、実際は適切な量を使用できていない(使用量が少ない)ことが一番原因として多いです。以下で適切な外用方法をお示しします。
<狭い範囲に塗る場合>
指先に少量つけたお薬を患部にのせ、お薬がややテカる程度にやさしく塗り広げてください。擦り込む必要はありません。
<広い範囲に塗る場合>
広い範囲に塗る場合の薬の量の目安として、FTU(フィンガーチップユニット)という単位を用います。チューブで人差し指の先から第一関節まで薬を出した量(約0.5g)で、手のひら2枚分くらいの面積に塗るのにちょうどよい量です(これを1FTUといいます)。
<薬を塗った後の見た目の目安>
表面がテカってべたつく程度、ティッシュペーパーが貼りつくくらいの程度が適切な塗り方の目安です。
◎ステロイド外用薬をやめるとすぐ悪化する場合
ステロイド外用薬は現在起こっている炎症を抑えることが出来ますが、体質を変えているわけではないので、アトピー性皮膚炎などでは皮膚状態が良くなって薬をやめると悪化することはよくみられます。ただ、体質によるものであっても皮膚の状態を良くすると、外界からの刺激に強くなるので悪化する頻度は減らすことはできます。一見して良くなっていても、顕微鏡で見ると炎症が残っていることはよくあります。皮膚炎を繰り返す場合はいったんよくなった後、塗る頻度を 1日2回 → 1日1回 → 2日に1回 → 3日に1回 → 週に1回 程度のペースで減らすようにしてください(1~2週間で次の段階へ移行するようにしてください)。
薬を減らしている間も石けんを用いて皮脂をきれいに落とし、保湿をしっかりするなどスキンケアは毎日行いましょう。
◎ステロイド外用薬はくせにならないか
ステロイド外用薬がくせになることはありません。正しい塗り方をすれば、皮膚状態が改善するためトータルのステロイド使用量は減らせます。ステロイド外用を適切に使用しない場合、皮膚炎がなかなか改善しないので、皮膚が分厚くなったり、色素沈着が起こったりして(これら2つは一旦起こると治りにくい)、かゆくて夜しっかり眠れず翌日に支障をきたす、など様々な悪いことが起こります。ステロイド外用薬の副作用は上でお示ししたとおり通常の使用法ではあまり起こらないことが知られており、ステロイド外用を使用しない方が圧倒的に害が多いです。
◎ステロイド外用薬と日焼けについて
ステロイドを外用した部位が日焼けをした場合に色素沈着を起こす、と言われることがありますが、実は医学的根拠はありません。基本的にはスキーや海水浴など、皮がぼろぼろめくれるレベルの強い日焼けでなければ問題はありません。ただ、もともとの皮膚炎が日焼けにより悪化してしまうことはあるので注意が必要です。また、最近では子どもであっても過度の日焼けは避けた方がよいとされています。ステロイド外用薬の使用の有無にかかわらず、外遊びをするときは日焼け止めを塗る方がよいでしょう。
以上、ステロイド外用薬についてお話させていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。