こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。
今回は乳児湿疹についてお話させていただきます。
◎乳児湿疹とは
乳児湿疹は、そのままですが１歳未満の乳児にみられる湿疹の総称です。その原因によって以下の疾患に分類されます。湿疹の状態や部位をみて診断しますが、厳密な区別は難しいことも多いです。
① 乳児脂漏性湿疹：一般的な乳児湿疹です。特に生後3か月くらいまではお母さんからもらったホルモンの影響で赤ちゃんは皮脂が多い状態のため、皮脂が毛穴につまったり、雑菌が繁殖して、湿疹ができます。
② 皮脂欠乏性湿疹：生後6か月を過ぎると逆に皮脂が少なくなるので、肌が乾燥して湿疹ができやすい状態になります。
③ 汗疹：いわゆるあせもです。赤ちゃんは汗かきなので、あせもができやすい状態です。
④ 接触性皮膚炎：いわゆるかぶれです。よだれや尿、便、汗などの刺激で湿疹ができます。
⑤ アトピー性皮膚炎：数か月以上湿疹が続く場合はアトピー性皮膚炎の可能性があります。乳児の場合はアトピー性皮膚炎に食物アレルギーが関係していることが多いです。
◎病院で処方される薬は
皮膚の状態を観察し、適切な薬を選択して処方します。
・保湿剤：保湿をしっかり行うことで皮膚の抵抗力や修復力、治癒力が上がります。剤形としてスプレーやフォーム（泡）、ローション、クリーム、軟膏があり、使用感や効果が変わります。さらっとしている方が保湿力は弱いですが、使用感は良いです。一般的にはローションかスプレーで開始し、経過をみて必要であれば剤形を追加・変更することが多いです。
・ワセリン：皮膚を保護してよだれや尿、便が直接皮膚に付着して炎症を起こすことを防ぎます。べたっとしているので、顔などに使用する場合はよいのですが服でおおわれる部位には使用しにくいです。
・ステロイド：皮膚の炎症を抑える効果があります。赤ちゃんは皮膚が薄いため、通常弱いステロイド薬でも十分効果が得られます。適切に使用すれば副作用はあまり気にしなくても大丈夫です。保湿剤も同時に使用する場合、先にステロイドを塗って、その上から保湿剤を塗るようにしましょう。
※保湿剤やステロイドなど、塗り薬が肌に合わず使用開始後湿疹が急に悪くなることがごくまれにあります。その場合は使用を中止し早めに病院を受診してください。
◎赤ちゃんのスキンケア方法
入浴時には石けんやボディーソープをしっかり泡立てて（最近では泡で出るボディーソープもあり便利です）手に付けて、やさしくなでるように洗ってください。石けんやボディーソープはきれいに洗い流すことも重要です（顔はぬらしたガーゼでやさしくふき取ってください）。首まわりや外陰部など、しわになっている場所はひろげながらしっかり洗いましょう。入浴後は処方された保湿剤をたっぷり全身に塗ってあげてください。赤ちゃんはよく汗をかくので、汗が気になる場合はこまめに肌着などを着替えるようにしましょう。
◎頭や眉毛につく黄色いかぴかぴについて
この黄色いものの正体は皮脂のかたまりです。脂漏性湿疹では皮脂がかたまって頭や眉毛の部分にこびりつくことがあります。無理にはがそうとしたり強くこすったりすると出血することがあります。石けんやボディソープ使って日々洗っていると徐々に取れることが多いですが、入浴前に薬用のオリーブオイルを塗って軟らかくしておくと落ちやすくなります（目に入らないように注意してください）。
◎アトピー性皮膚炎との見分け方
実は乳児期早期は脂漏性湿疹とアトピー性皮膚炎を見分けることは困難です。ただ、アトピー性皮膚炎でも他の湿疹と治療は同じで、スキンケア + ひどいところにステロイドを塗ることが中心です。
乳幼児期に湿疹など荒れた皮膚の状態が続くとアレルギー傾向となり、食物アレルギーや花粉症など吸入アレルゲンに対するアレルギーを発症しやすくなることが知られています1）。また、新生児期からの適切な保湿剤の塗布によりその後のアトピー性皮膚炎の危険性が低下することが報告されており2）、スキンケアをしっかりしてあげることがアトピー性皮膚炎の予防につながるかもしれません。
いずれにせよ、どのような湿疹であっても適切に治療を行い皮膚を健康に保つことが重要です。
【参考文献】
1）Johansson EK, et al. IgE sensitization in relation to preschool eczema and filaggrin mutation. J allergy Clin Immunol. 2017; 140:1572-1579.e5.
2）Horimukai K, et al. Application of moisturizer to neonates prevents development of atopic dermatitis. J Allery Clin Immunol. 2014 Oct;134(4):824-830.e6.
以上、乳児湿疹についてお話させていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。