予防接種

生後12か月までのインフルエンザワクチンの話

 こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。

 今回はインフルエンザワクチン、特に生後6~12か月未満の乳児における有効性についてお話させていただきます。

 インフルエンザ予防において、インフルエンザワクチンは感染リスクを減らすための重要な手段であり、毎年の接種が推奨されています。本稿では、特に生後6〜12か月未満の乳児に対するインフルエンザワクチン接種について、12か月以降との違いを含め解説します。

 

◎インフルエンザワクチンとは

 インフルエンザワクチンは、A型およびB型インフルエンザウイルスに対する免疫を得るために使用されるワクチンです。インフルエンザウイルスは変異が早いため、ワクチンの株は毎年見直され、シーズンごとに新しいワクチンが提供されます。これにより、流行する株に対応した予防効果を高めることが可能です。2024年はA型2種類(H1N1型:2009年の新型インフルエンザ、H3N2型)、B型2種類(山形系統、ビクトリア系統)に対応したワクチンとなっております。

 ワクチンは、不活化ワクチン(生ウイルスを使わないタイプ)であり、接種することでウイルスの抗体が体内に作られ、インフルエンザに対する免疫力が高まります。

 

◎インフルエンザワクチン接種の目的と効果

 インフルエンザワクチン接種の主な目的は、感染の予防、重症化の防止、およびインフルエンザによる合併症のリスクを軽減することです。特に小児においては、インフルエンザ感染が急速に進行し、肺炎や脳炎などの重篤な合併症を引き起こすことがまれにあるため、予防が重要視されています。

 効果は個人差がありますが、一般的には接種から2週間後に効果が現れ、数か月にわたって持続します。乳幼児期は感染機会が多く、また免疫系も未発達なため、ワクチン接種による予防は重要です。

 

◎生後6~12か月未満のインフルエンザワクチン接種

・生後6~12か月未満の接種が重要な理由

 生後6か月未満の乳児は、インフルエンザワクチンを接種することができません。そのため、生後6か月を過ぎた時点で速やかにワクチン接種を行うことが推奨されています。この年齢層では免疫力が未発達であり、インフルエンザに対する自然免疫も不十分であるため、インフルエンザにかかるリスクが高く、重症化しやすいとされています。

 

・接種回数とスケジュール

生後6か月~12か月未満の乳児には、2回の接種が推奨されます。通常は、1回目の接種後に2~4週間の間隔を空けて2回目を接種します。これにより、十分な免疫反応を得ることが期待されます。B型肝炎ワクチンなど他のワクチンとの接種間隔には特に規程がなく、インフルエンザワクチンとの同時接種も可能です。

 

・生後6〜12か月未満の接種の有効性と安全性

 有効性については、6〜12か月未満の幼児においても、インフルエンザに対する一定の予防効果が確認されています。ただし、幼児の免疫反応は成長に伴って変化するため、抗体の効果は12か月以降の乳児よりもやや低いとされています。

 一方、0歳時のときにインフルエンザワクチンを接種すると免疫が反応し、次シーズン(1歳以降)のインフルエンザワクチンの接種による免疫獲得効果が高くなる(プライミング効果)と報告されています1)。ワクチンによって重症化リスクを減少させることができるため、積極的な接種が推奨されています。

 安全性についても、生後6か月以上の乳児においては、ワクチンの安全性が確認されており、副反応は一般的に軽微なものです。接種後には局所反応(痛み、腫れ、発赤)や軽度の発熱が見られることがありますが、通常は数日以内に回復します。

【参考文献】

  1. Marlk G Thompson, et al:Influenza Vaccine Effectiveness for Fully and Partially Vaccinated Children 6 months to 8 Years Old during 2011–2012 and 2012–2013: The Importance of Two Priming Doses.Pediatr Infect Dis J. 2016 March ; 35(3): 299–308

 

・ご家族の方も予防が重要です

生後6~12か月の乳児がインフルエンザに感染する場合、多くは家庭内で家族のだれかから感染することが多いです。同居される家族の方もインフルエンザワクチンを接種することで感染予防効果が高まります。

 

・生後12か月以降の接種との違い

 生後6〜12か月未満の乳児と比べ、生後12か月以降の乳児は免疫系がより発達しているため、ワクチンに対する抗体産生がより効率的に行われます。そのため、ワクチンの予防効果も比較的高く、持続期間も長い傾向があります。

 

◎インフルエンザワクチン接種に関するよくある質問

Q1. ワクチン接種後の副反応はありますか?

A1. 乳児におけるインフルエンザワクチンの副反応は、局所的な痛みや発熱、腫れなどが一般的です。通常は数日以内に治まりますが、発熱が続く場合や症状が悪化する場合は医師に相談してください。

Q2. インフルエンザワクチンは毎年接種する必要がありますか?

A2. はい。インフルエンザウイルスは毎年変異するため、前年のワクチンがそのまま効果を持続することは難しいです。そのため、毎年新しいワクチンを接種することが推奨されます。

Q3. 生後6か月未満の赤ちゃんはどうすればよいですか?

A3. 生後6か月未満の赤ちゃんはワクチン接種ができないため、家庭内の大人や周囲の家族がワクチンを接種し、感染リスクを低減することが大切です。また、手洗いやマスク着用などの基本的な感染予防策を徹底することも有効です。

 

◎インフルエンザワクチンに関する最新の知見

 近年の研究によると、インフルエンザワクチン接種は乳児においても一定の効果があり、重症化予防に寄与することが示されています。例えば、ある研究では、6〜12か月未満の乳児においてワクチン接種が入院率を有意に低下させる効果があることが報告されており、世界保健機関(WHO)やアメリカ小児科学会(AAP)も乳幼児に対するインフルエンザワクチン接種を推奨しています2)、3)。

【参考文献】

2)American Academy of Pediatrics. (2021). Influenza Vaccine Recommendations. Pediatrics, 148(4), e2021052335.

3)World Health Organization. (2020). Vaccines against influenza WHO position paper – November 2012. Weekly Epidemiological Record, 47, 461–476.

 

 インフルエンザワクチン接種は健康を守るための大切な手段です。当院では、生後6か月から中学生に加えて付き添いをされる保護者の方までのインフルエンザワクチン接種を実施していますので、ぜひお気軽にご相談ください。

 

 以上、インフルエンザワクチンについてお話させていただきました。

 最後までご覧いただきありがとうございました。

関連記事