こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。
今回は保湿剤についてお話させていただきます。
◎保湿剤の種類について
保湿剤にはいろいろな種類があり、効果をあらわすメカニズムによって、「エモリエント」と「モイスチャライザー」に大きく分けられます。病院で一般的に処方される白色ワセリン(プロペト®など)はエモリエントに、ヘパリン類似物質(ヒルドイド®など)はモイスチャライザーに分類されます。
エモリエントは塗ることで皮膚を保護するとともに、皮膚からの水分の蒸発を防ぎ、皮膚の表面の角質を軟らかくする効果があります。一方モイスチャライザーは皮膚を保護しつつ角質の水分を保持する効果があり、保湿効果を発揮します。
一般的には保湿効果はモイスチャライザーの方が高いと考えられています。
こう書くと保湿剤として使用する場合、モイスチャライザーの方が断然よさそうな印象を受けられるかもしれませんが、エモリエントには皮膚の保護作用が強いという特長もあるので、状態に応じて適切な保湿剤を選ぶ必要があります。
◎皮膚の正常構造について
次に皮膚の正常構造についてお話します。
皮膚は簡単に言うと体の外と中の間の壁のような存在です。体の外側からの様々な刺激から守り、同時に必要な水分や物質を体の内側から逃がさないという重要な役割を担っています。
皮膚は下の図のように層構造をしており、いちばん外側の「皮膚膜(皮脂膜ともいいます)」の下に「角質層」と呼ばれる外界からの刺激に対する防御壁となる構造があります。この角質層のすき間は保湿成分で満たされています。
いちばん外側の皮膚膜には、角質層を守り皮膚表面からの水分蒸発を防ぐはたらきがあります。
冬になると温度や湿度が下がり、皮膚膜がはがれやすくなります。そうなると角質層がむき出しになったり、角質層の中の保湿成分が失われてしまって皮膚が乾燥しやすい状態になります。一方夏は夏で汗をよくかくことで皮膚膜がはがれやすくなるので、結局一年中皮膚の悩みは尽きないわけですが・・・・
また新型コロナウイルスの流行以来、手洗いや手指消毒を頻回に行うようになりましたが、手洗いを行うことで皮膚膜がはがれてしまったり、消毒薬の刺激で角質層にダメージを与えてしまったりするので、手荒れや手の乾燥がひどくなる方が年齢を問わず増えてしまっています。
日本に住んでいる限り乾燥や汗の問題は避けられませんし、また今後も感染対策としての手洗いや消毒は続けていく必要があるので、皮膚をより良い状態に保つためにはしっかりとしたスキンケアを行っていくことが重要になります。
◎適切な保湿剤の選択方法
さて、最後に適切な保湿剤の選択についてお話したいと思います。
ヒルドイド®などのモイスチャライザーは皮膚の保護効果に加えて保湿効果もあるため、保湿効果を持たないワセリンなどのエモリエントに比べると使いやすいことが実際に多いですが、エモリエントの方が望ましい状況もあります。
一般的にエモリエントは皮膚の保護効果が優れているため、外界からの刺激が多い場面、例えば乳児期にミルクや唾液などがついて口のまわりが荒れたり、おむつのゴム部分がこすれる場所が赤くなったりするような患者さんに特によく使用されます。またエモリエントにはそれ自身に添加物がほとんどないため、刺激が少ないという長所もあり、他の保湿剤を使用すると皮膚が赤くなったりする患者さんに対してよく使用されます。
一方エモリエントは、皮膚膜の油分として効果を示すという性質上、どうしてもべたつきが強く、やや使い勝手が悪いという欠点もあります。特に塗った後に服を着る場合、べたべたが気になることが多いです。
モイスチャライザーはヒルドイド®に代表されるように色々な剤形(フォーム、ローション、クリーム、ソフト軟膏)があり、エモリエントよりも一般的に使用感が優れています。また複数の製薬会社から多くのジェネリック医薬品が発売されており、製品ごとに添加物が違い使用感も異なるため、自分にあった製品を見つけやすいという特長もあります。毎日使う薬なので、やはり塗りやすさは重要なポイントですね。
◎まとめ
以上をまとめますと、
・普段の保湿剤としてはモイスチャライザー(ヒルドイド®など)を使用する。
・口のまわりや接触が多い部分にはエモリエント(プロペト®など)を使用する。
のがおススメです。適切な保湿剤を使用してすべすべの皮膚を目指しましょう。
お薬のことでご質問がある場合は、お気軽にご相談ください。
以上、保湿剤のお話をさせていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございます。