こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。
今回は水いぼ(伝染性軟属腫)についてお話させていただきます。
◎水いぼとは
水いぼの医学的な正式名称は 「伝染性軟属腫(でんせんせいなんぞくしゅ)」といいます。「ポックスウイルス」というウイルスの一種(伝染性軟属腫ウイルス:Molluscum Contagiosum Virus)に皮膚が感染することで生じます。
見た目の特徴は以下の通りです
・直径2〜5mmほどの光沢のある丸いイボ
・中心に小さなくぼみ(臍状陥凹)が見えることが多い
・痛みやかゆみは通常は軽度
・白っぽい角質状の物質がつまっていることもある
水いぼと診断する検査は通常なく、見た目で診断を行います。
◎原因と感染経路について
伝染性軟属腫ウイルスは、皮膚同士の接触で感染します。免疫ができるまでは再発することもありますが、いったん免疫が成立すれば多くは一生かからなくなります。
●こどもで水いぼがみられやすい理由
・こどもの皮膚は大人より薄く、傷ができやすい
・皮膚の免疫機能が発達途中:皮膚が乾燥すると皮膚の免疫機能が低下し、伝染性軟属腫ウイルスの感染がさらに起こりやすくなります
・水泳や体育、兄弟間の接触など皮膚同士が触れる機会が多い
●感染経路について
・皮膚の直接接触
・タオル、浮き輪などの肌が触れる物の共有
・湿疹による引っかき傷からの感染拡大
プールの水を介した感染は証明されていませんが、プールサイドでの接触やビート板の共有などで感染することがあります。
◎自然経過について
水いぼは 時間が経つと自然に治る病気 です。免疫がウイルスを認識し、最終的には体から排除してくれます。
● 自然治癒にかかる期間
一般的には 半年〜1年程度ですが、長い場合は 2〜3年 に及ぶこともあります。経過は個人差が大きいです。
● 放置して起こる問題
水いぼそれ自体が大きな病気を引き起こすことはありません。
ただし、以下のような場合は生活面で支障が出ることがあります。
① かゆみ・湿疹が強い場合
掻き壊すことで皮膚の常在菌などによる感染が起こり、「とびひ(伝染性膿痂疹)」になることがあります。
② 数が増えすぎて困る場合
数が増えると保育園や学校で気にされるケースもあり、見た目の心配から治療を希望される方も多いです。
③ 水いぼがあることで制限がかかる場合
学校保健法上水いぼでは登園・登校は禁止されていません。プールに入ることも禁止されていませんが、ビート板や浮き輪の共有は避けるように指導されています。実際は水いぼのある部分をラッシュガードなどで覆えばプールは可能としている園が多い印象ですが、水いぼがある場合は水泳を禁止している施設もあるため、現実的には制限がかかることもあります。
◎治療法について
水いぼに対して様々な治療法が提案されていますが、現時点で十分にエビデンス(根拠)のある治療はなく1)、適宜相談しながら方針を決めているのが実際です。保険診療で処方できる水いぼの特効薬はありません。以下で一般的に行われている治療法について解説します。
【参考文献】
1)Adelaide A. et al. Molluscum Contagiosum: Epidemiology, Considerations, Treatment Options, and Therapeutic Gaps. J Clin Aesthet Dermatol 2023;16(8 Suppl 1):S4–S11
1.経過観察(自然治癒を待つ)
最も一般的な方法が 経過観察 です。
● メリット
・痛みがない
・費用がかからない
・自然治癒力に任せるため副作用がない
・心理的負担が少ない
● デメリット
・治るまでに時間がかかる
・増える可能性がある
・見た目が気になりやすい
● 向いているケース
・水いぼの数が少ない
・痛い治療が苦手
・生活上、大きな支障がない
・自然に任せたいと考えるご家庭
水いぼの原因である伝染性軟属腫ウイルスは皮膚の免疫機能が低下している場合に悪化したり拡大しやすいため、保湿をしっかり行うことで皮膚のバリア機能を高めることが重要です。
2. 摘除(ピンセットでの除去)
昔から行われてきた伝統的な治療法です。医師が専用のピンセットで水いぼをつまみ、中のウイルスを取り除きます。水いぼを「むしり取る」イメージです。
● メリット
・短時間で水いぼがなくなる
・感染拡大を抑えられる
● デメリット
・痛みがある(特に乳幼児ではストレスが大きい)
・出血することがある
・処置後、赤みやかさぶたが残ることがある
・再発する場合がある
● 向いているケース
・短期間で数を減らしたい
・園のルール等で治療を求められる
・お子さんが処置に耐えられる年齢
※水いぼの摘除は当院では行っておりません。皮膚科で行うことが多いですが、担当医師の方針により摘除を行う医院と行わない医院があります。
3. ヨクイニン(漢方)内服
ヨクイニンはハトムギから作られた漢方薬で、昔から皮膚の免疫を整える目的で使用されています。ただし、ヨクイニンは水いぼに対して保険適応がないため、水いぼの治療目的の処方はできません。市販薬は5歳以上を適応にしていることが多いようです。
● 効果
・水いぼを「できにくくする」治療で、自然治癒を早める可能性があります。
・ただし、個人差が大きく、劇的な即効性はありません。
● メリット
・痛みがない
・副作用が少ない
・他の治療と併用できる
● デメリット
・効果にばらつきがある
・飲み忘れやすい
・味が苦手なお子さんもいる(味は爽健美茶🄬を濃くしたような印象です)
● 向いているケース
・痛い治療を避けたい
・軽度〜中等度の症例
・根気よく続けられる
4. mBFクリーム🄬
銀イオンを含む塗り薬で殺ウイルス作用や抗炎症作用 をもつとされています。かゆみの軽減にも寄与することもあります。
● メリット
・痛みがない
・他の治療と併用できる
● デメリット
・効果発現まで数週間〜数ヶ月かかる
・赤みや刺激感が出ることがある
・使用には医師の判断が必要
・費用がかかる
● 向いているケース
・痛みのある治療を避けたい
・中等度の水いぼで数が多い
・塗り薬が続けられる
mBFクリーム🄬は保険適応はなく、自費で購入するクリームです(1本15gで2000円前後です)。医療機関専売化粧品といって、一般のドラッグストアなどでは販売されておらず、取り扱い医療機関の医師が診察して必要と判断された方のみ購入できます。当院も取り扱い医療機関となっているため、ご興味がある方はご相談ください。
◎日常生活で気をつけること
① スキンケアを行う
湿疹や皮膚の乾燥があると水いぼが広がりやすいため、保湿やステロイド外用で皮膚の状態を良くすることが重要です。
② タオルの共有を避ける
きょうだい間で広がるパターンが多いため、できれば個別にした方が良いでしょう。
③ 入浴は通常どおり
家庭内での感染を完全に防ぐことは困難ですが、一般的な入浴で特別な問題はありません。
◎よくある質問
Q1. 大人にも感染しますか?
A. ありえますが、子どもに比べると非常に少ないです。
Q2. 再発しますか?
A. ウイルスに対する免疫がつくまでは再発することがあります。
Q3. 跡が残ることはありますか?
A. 掻き壊しや摘除後に赤みが一時的に残ることがありますが、多くは数ヶ月で薄くなります。
Q4. プールや体育はやめた方がいいですか?
A. 原則として参加可能です。ただし、施設によっては対応が異なる場合があります。
以上、水いぼについてお話させていただきました。
最後までご覧いただきありがとうございました。