アレルギー

舌下免疫療法の話

 こんにちは、つま小児科クリニックのブログをご覧いただきありがとうございます。このブログではクリニックのことや、小児科に関係する色々なことをお話させていただこうと思っております。

 今回は、花粉症やアレルギー性鼻炎の根本的な治療法として期待されている、舌下免疫療法についてお話します。

※2023年5月現在、スギ花粉症に対する舌下免疫療法は薬剤供給上の問題から、新規開始ができない状態となっています。

 

◎どのような治療か

 花粉症など、アレルギー性鼻炎はアレルゲンと呼ばれる原因物質(スギ花粉、ダニなど)によって引き起こされます。舌下免疫療法は、その患者さんのアレルギーの原因になっているアレルゲンを毎日繰り返し投与することにより、体をアレルゲンに慣らし、症状を和らげるのみならず、根本的な体質改善(長期寛解や治癒)が期待できる治療法です。

 現在、舌下免疫療法はスギ花粉症およびダニアレルギー性鼻炎に対して行われています。

 

◎対象の患者さんについて

 対象は5歳以上で、くしゃみや鼻水などアレルギー性鼻炎の症状があり、血液検査でスギもしくはダニに対するアレルギー反応がある患者さんです。

 

◎治療の流れについて

・治療は1日1回舌の下に薬剤を投与します。投与後1~2分は舌下に保持し、その後飲み込みます。投与後5分間はうがいや飲食を控えます。

・初回投与時にアレルギー反応が起こることが多いため、初回投与の2週間前から抗アレルギー薬の内服を開始します。初回投与は医療機関で行い、投与後1時間程度は院内で経過観察します。翌日(2日目)からは、自宅で患者さん自身が投与しますが、家族がいる場所での投与が推奨されます。抗アレルギー薬は舌下免疫療法開始後最低3か月間は継続します。

・投与前後2時間程度は入浴や飲酒、激しい運動を避けます。夜に行われる方が多いです。

・治療を開始して1週間経過して問題がない場合、薬剤を増量し継続します。

・治療効果は数か月してから実感できることが多いです。

・治療期間は最低2年、通常3~5年間が推奨されます。治療期間中は月に1回の通院が必要です。

・体調不良時や旅行時など、短期間の中断は問題ありませんが、投与を1週間以上長期中断した後に再開する場合は、医師に相談する必要があります。

・転居などで当院への通院が難しい場合は、近くのアレルギー専門医療機関を紹介のうえ治療を続けることも可能です。

・スギ花粉症に対する舌下免疫療法を開始する場合、スギ花粉の飛散時期を避けて行います(通常6~12月に開始します)。ダニアレルギー性鼻炎の舌下免疫療法は一年中いつでも開始できます。

 

◎有効性について

・舌下免疫療法は、8割前後の患者さんで有効性が認められています。

・3~5年間の治療期間終了後も効果は保たれていることが多いと報告されています1)。

・ダニアレルギーはアレルギー性鼻炎だけでなく、アトピー性皮膚炎や気管支喘息とも関連しています。ダニアレルギー鼻炎に対する舌下免疫療法は、ダニアレルギーが関係するアトピー性皮膚炎の状態を改善させると報告されています2)。一方ダニアレルギーが関係する気管支喘息については症状を改善されるという報告もみられますが3)、まだ十分評価が定まっていないのが現状です。

・抗アレルギー薬の飲み薬や点鼻薬、点眼薬はあくまで一時的に症状を抑えるだけで、根本的な治療ではありません。根本的な体質改善(長期寛解・治癒)を希望される患者さんには積極的におススメしています。

【参考文献】

1)Yonekura S, et al. Disease-Modifying Effect of Japanese Cedar Pollen Sublingual Immunotherapy Tablets.

J Allergy Clin Immunol Pract. 2021 Nov;9(11):4103-4116.e14.

2)Langer SS, et al. Efficacy of House Dust Mite Sublingual Immunotherapy in Patients with Atopic Dermatitis: A Randomized, Double-Blind, Placebo-Controlled Trial. J Allergy Clin Immunol Pract. 2022 Feb;10(2):539-549.e7.

3)Richards JR, Stumpf JL. House Dust Mite Sublingual Immunotherapy for Pediatric Patients With Allergic Asthma. Ann Pharmacother. 2018 Oct;52(10):1019-1030.

 

◎舌下免疫療法の副作用など安全性について

・副作用としては投与場所である口の中の腫れ、かゆみなどが最も多くみられます。

・特に、投与後少なくとも30分間、治療開始初期の約1か月間は注意が必要です。

・これらの投与後数時間以内に自然に回復することがほとんどですが、症状が長時間続く場合は医師に相談してください。

・また、アナフィラキシーなど重い症状が起こる可能性は非常に低いですが(0.1%未満)、ゼロではありません。

・アナフィラキシーと考えられる症状(全身のじんましんなどの皮膚症状、強い咳き込みや呼吸困難、持続する腹痛や嘔吐、意識障害など)がみられた場合、救急車を呼ぶなど直ちに医療機関を受診するなど迅速な対応が必要です。

 

 

 以上、舌下免疫療法についてお話させていただきました。長期間にわたる投薬や通院など、大変な治療ではありますが、治療を受けられた多くの患者さんでアレルギー性鼻炎のつらさが軽減が実感できる効果が高い治療です。

 興味がある方はお気軽にご相談してください。

 最後までご覧いただきありがとうございます。

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